暮らしと科学と哲学と

 第13回 本の力(2017年12月17日13:30 ~16:00)

テーマ:Kazuo Ishiguro“Never Let Me Go(2005)(私を離さないで)”


話題提供者・田村さんから本書のあらすじが紹介され、そして、「倫理・科学技術・法律・経済」の関わりという観点で意見交換して欲しい、との指導があり、その後、情報交換となったのですが、とても興味深いあつまりとなりました。

 

ノーベル文学賞を受賞したイシグロ・カズオ氏の代表作であるこの作品は、臓器提供を運命づけられた、主人公たちを成長する過程から描写していく物語です。といっても冒頭からしばらくは、その意味が明らかにならないのではがゆい感をもたれる方も多い本です。

 

一部ご紹介します。

 

・魂の存在をしめす手段として、アートがある。彼らが描いた絵でその存在を伝えられると考えたということは興味深い。

 

・ “行かせないで(never let me go)”は、忘れてはいけないもの(記憶は変化するものだから)を書き留めておかなければならない、とする著者の意思を表しているのではないか。

 

・遺伝子編集が可能な現代、すでに米国のベンチャー企業によるdesigner babyが作られている。

 

・“限られた生命”の中では、identity形成のために記憶が大切ではないか。

 

あらためてアイデンティティとは何かという議論につながっていきました。どんどん広がりをみせた感想の交換に改めて文学がもつ意味をみせつけられましたが、この「暮らしと科学と哲学と」というテーマの読書会は続けての開催を計画中です。